猫に髪の毛を毛づくろいされる経験は、飼い主にとって微笑ましいものですが、同時に「なぜ?」と疑問を感じる瞬間でもあります。
猫に毛づくろいされる髪の毛には、愛情表現だけでなく本能的な理由や心理が隠れています。
しかし、その可愛らしい行動の裏には、誤飲や健康リスクなど注意が必要な面も存在します。
本記事では、猫が髪の毛を舐めたり噛んだりする理由、考えられる健康リスク、そして無理なくやめさせる具体的な方法をわかりやすく解説します。
猫との絆を深めながらも、安全で快適な共存を続けるためのヒントをぜひ参考にしてください。
- 猫に髪の毛を毛づくろいされる理由
- 毛づくろいに潜む健康リスク
- やめさせる具体的な対処法
目次
猫が髪の毛を毛づくろいする理由は?

愛猫が飼い主の髪の毛を毛づくろいする姿は、とても愛らしく見える瞬間です。
しかし、なぜ猫はわざわざ人間の髪の毛を舐めたり噛んだりするのでしょうか?
この行動は単なる癖や偶然ではなく、猫の本能や感情、社会的な習性が複雑に絡み合った結果です。
猫の習性を理解することで、愛猫がどのような気持ちで飼い主に接しているのかが見えてきます。
ここでは、猫が髪の毛を毛づくろいする行動の理由を専門的な視点から詳しく解説していきます。
アログルーミングの延長線上にある愛情表現
猫同士が互いに毛づくろいをする行動をアログルーミングと呼びます。
これは信頼関係を深める社会的な行動であり、親密な関係にある相手に対して行われます。
飼い主の髪の毛を舐める行動も、まさにこのアログルーミングの一環であり、猫が飼い主を家族や仲間と認識している証です。
特に、子猫期から人間に育てられた猫は、この行動が強く現れる傾向があります。
匂いや質感への安心感
猫は匂いに非常に敏感な動物です。
飼い主の髪の毛にはシャンプーや整髪料、頭皮から出る自然な皮脂の匂いが含まれています。
これらの匂いは猫にとって安心感を与える要素になることがあります。
特に柑橘系以外の甘い香りやハーブ系の香りは猫にとって心地よく感じられる場合も多いのです。
揺れる髪に狩猟本能が刺激される
猫はハンターの本能を持っています。
飼い主の髪の毛が動く様子は、小動物や獲物のように見えることがあります。
特にロングヘアや風で揺れる髪は猫の狩猟本能を刺激し、つい舐めたり噛んだりする行動へとつながります。
ママ猫返し行動による世話焼き
母猫が子猫を舐めて世話をするように、猫は飼い主にも世話を焼く本能的行動を見せることがあります。
これをママ猫返しと呼ぶことがあり、甘えん坊な性格の猫ほどこの傾向が強くなります。
この場合、飼い主への深い信頼と愛情が行動に表れているのです。
ストレス緩和や精神安定の一環
猫にとって毛づくろいはストレス解消行動でもあります。
落ち着きたい時や不安を感じた時に、飼い主の髪を毛づくろいすることで気持ちを落ち着けている可能性もあります。
これは飼い主と過ごす安心できる環境下で特に多く見られます。
以上のように、猫が飼い主の髪の毛を毛づくろいする行動は、単なる遊びではなく、愛情・本能・安心感が複雑に絡み合ったものなのです。
毛づくろいに潜む健康リスク

猫が髪の毛を毛づくろいする行動は愛情表現ですが、可愛い仕草の裏に健康面のリスクが潜んでいることも事実です。
放置してしまうと、猫の健康に重大な影響を与えるケースもあるため、しっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、猫が飼い主の髪の毛を毛づくろいすることで生じる3つの代表的なリスクについて詳しく解説します。
① 抜け毛の誤飲による消化器障害
猫は自らの毛づくろいでも毛を飲み込みますが、人間の髪の毛は消化が困難です。
長くて滑りやすい人の髪を誤って飲み込んでしまうと、胃や腸内に蓄積され毛球症(ヘアボール症)を引き起こす恐れがあります。
重症化すれば腸閉塞や嘔吐、食欲不振といった消化器障害に発展するリスクもあるため注意が必要です。
② シャンプー・整髪料の成分による中毒リスク
人間用のヘアケア製品には猫に有害な成分が含まれていることがあります。
例えば、香料、防腐剤、アルコール、シリコン、パラベン、精油成分などは猫の肝臓や神経系に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
特にアロマオイル配合の製品は猫にとって中毒性を示すケースもあるため使用には十分な注意が必要です。
③ 髪のダメージや誤飲事故の危険
猫が髪の毛を噛んだり引っ張ったりすることで、飼い主の髪が切れたり抜けたりすることもあります。
また、髪につけているヘアゴム・ヘアピン・アクセサリーの誤飲事故が報告されており、こちらも見逃せないリスクです。
小さな部品が消化管に詰まれば、開腹手術が必要になるケースもあります。
このように、猫の愛情行動の裏に潜むリスクを理解し、日頃から予防策を講じることが重要です。
次のセクションでは、具体的な対策方法をご紹介します。
無理なくやめさせる具体的な方法

猫の毛づくろい行動を完全にやめさせる必要はありませんが、健康リスクを避けるためには適切な工夫が必要です。
ここでは、猫の習性を尊重しながら無理なくやめさせるための実践的な方法をご紹介します。
① 髪をまとめる・帽子を活用する
髪の毛を物理的に保護するのが最もシンプルで効果的です。
猫と過ごす時間や就寝時には、髪をゆるく後ろでまとめたり、お団子ヘアにすることで猫のアクセスを減らせます。
さらに薄手の帽子やナイトキャップを活用するのもおすすめです。
とくに夜間の毛づくろい癖が強い猫には有効です。
② 匂いを調整して猫の興味を減らす
猫は柑橘系の匂いを苦手とする傾向があります。
シャンプーやトリートメントを柑橘系やハーブ系の安全な香りに変えることで、自然と猫の興味を逸らすことができます。
ただし猫に無害な製品選びが最重要です。必ず成分を確認しましょう。
③ おもちゃや遊びで注意を逸らす
猫が髪に興味を持ち始めたタイミングで注意を他に向けるのも有効です。
羽のおもちゃ、猫じゃらし、知育玩具など安全に遊べる代替対象を用意することで自然と髪への執着を減らせます。
④ 優しい声かけとスキンシップで修正する
髪を舐めた時は短くやさしく注意しましょう(例:「ダメよ」「ストップ」)。
その後は優しく撫でたり抱っこしたりして愛情を伝えます。
怒鳴ったり叩いたりすると信頼関係に悪影響を与えるため、穏やかな対応が重要です。
⑤ 獣医師に相談する(重度の場合)
もし執着が強すぎる、もしくは誤飲の危険が高い場合は、早めに獣医師へ相談しましょう。
行動学的な専門アドバイスや健康チェックを受けることで、安全で快適な共生を続けやすくなります。
以上のような工夫を取り入れれば、猫の気持ちを尊重しつつ無理のない形でリスクを減らすことができます。
まとめ:猫に毛づくろいされる髪の毛との付き合い方
猫が飼い主の髪の毛を毛づくろいする行動は愛情と信頼の証です。
アログルーミングに基づく親密な絆が行動に表れています。
一方で、誤飲や整髪料成分など健康リスクも潜んでいるため注意が必要です。
髪をまとめる・匂い対策・遊びで注意を逸らすなどの具体策を実践し、無理なく習慣を変えていきましょう。
また、猫の行動を無理に抑え込まず、優しく対応することが大切です。
愛猫との絆を深めながら、安全で快適な共生を続ける工夫を日々積み重ねていきましょう。
- 猫が髪を毛づくろいするのは愛情表現
- アログルーミング・匂い・狩猟本能が理由
- 誤飲や成分中毒などのリスクも存在
- 髪をまとめる・匂い調整・遊び誘導で対策
- 優しい声かけとスキンシップが効果的
- 重度の場合は獣医師相談も検討